最近SNSのXで「#好きな交響曲10個順不同2025 」というハッシュタグを見かけた。
これは文字どおり「自分が好きな交響曲を、順位づけせずに10個挙げてみよう」という意味のタグだが、頭に浮かんだのは「交響曲ってなんだっけ?」「みんな10曲も知ってるの?」といった疑問だ。
私は普段クラシック音楽をまったく聞くことがない。パッと思い浮かぶ交響曲らしきもの?と言えばベートーヴェンの『運命』。後は年末になると耳にする『第九(だいく)』くらい。

そもそも交響曲とはどんなジャンルなのかも分かっていなかったのだが、機会があれば聞いてみたいとは思っていたので、どんな交響曲に人気が集まっているのか興味が湧いた。
しかし、ハッシュタグをクリックしても、人気の交響曲がよく分からない。というのも、『第九』という曲の正確な名称は『交響曲第9番 ニ短調 作品125』と複雑で、『9番』『合唱』『合唱付き』『歓喜の歌』などと呼んだりすることもあるらしい。また、人によってはベートーヴェンのことを「ベト」とか「ベトベン」と略して書いていたりする。つまり玄人用語が多すぎるのだ。
そのため、Xのポストを1個ずつ見ていくだけでも難解なのに、全体の人気曲など到底分かるはずがない。そこで、近年流行りの人工知能『ChatGPT」を使って集計してみることにした。必ずしも正確なランキングとは言い切れないが、傾向を把握するには問題のない精度だと思うので、どんな交響曲に人気が集まっているのか楽しみながら見て欲しい。
集計日 :2025/4/30
集計曲数:2,256曲
集計対象:「#好きな交響曲10個順不同2025」を含むXの投稿333件
好きな交響曲ランキング
まずは投票数の多かった交響曲、上位50件のランキングを発表する。
順位 | 作曲家 | 曲名 | 投票数 |
1 | ブラームス | 交響曲第4番 | 64 |
2 | ベートーヴェン | 交響曲第3番(英雄) | 63 |
3 | チャイコフスキー | 交響曲第5番 | 59 |
4 | ブラームス | 交響曲第1番 | 56 |
5 | ベルリオーズ | 幻想交響曲 | 54 |
5 | ブルックナー | 交響曲第8番 | 54 |
7 | チャイコフスキー | 交響曲第6番(悲愴) | 53 |
8 | マーラー | 交響曲第5番 | 52 |
9 | ベートーヴェン | 交響曲第9番(合唱付き) | 51 |
10 | ラフマニノフ | 交響曲第2番 | 50 |
11 | マーラー | 交響曲第9番 | 46 |
12 | ブラームス | 交響曲第2番 | 45 |
13 | ベートーヴェン | 交響曲第7番 | 44 |
14 | ドヴォルザーク | 交響曲第9番(新世界より) | 42 |
15 | ブルックナー | 交響曲第5番 | 40 |
15 | ドヴォルザーク | 交響曲第8番(イギリス) | 40 |
17 | マーラー | 交響曲第6番 | 39 |
18 | モーツァルト | 交響曲第41番(ジュピター) | 37 |
19 | ブラームス | 交響曲第3番 | 36 |
20 | マーラー | 交響曲第1番 | 35 |
21 | マーラー | 交響曲第3番(夏の歌) | 34 |
21 | ベートーヴェン | 交響曲第5番(運命) | 34 |
23 | シベリウス | 交響曲第5番 | 33 |
24 | シューマン | 交響曲第2番 | 32 |
24 | シューベルト | 交響曲第8番(グレート) | 32 |
26 | モーツァルト | 交響曲第38番(プラハ) | 30 |
26 | マーラー | 交響曲第2番(復活) | 30 |
28 | シベリウス | 交響曲第2番 | 29 |
28 | ショスタコーヴィチ | 交響曲第5番(革命) | 29 |
30 | ショスタコーヴィチ | 交響曲第7番(レニングラード) | 28 |
31 | シューマン | 交響曲第3番(ライン) | 27 |
31 | マーラー | 交響曲第7番 | 27 |
31 | ベートーヴェン | 交響曲第6番(田園) | 27 |
31 | チャイコフスキー | 交響曲第4番 | 27 |
35 | モーツァルト | 交響曲第40番 | 26 |
36 | ブルックナー | 交響曲第7番 | 25 |
37 | シューベルト | 交響曲第7番(未完成) | 24 |
37 | メンデルスゾーン | 交響曲第3番(スコットランド) | 24 |
39 | ドヴォルザーク | 交響曲第7番 | 23 |
39 | ブルックナー | 交響曲第9番 | 23 |
41 | ベートーヴェン | 交響曲第2番 | 20 |
41 | カリンニコフ | 交響曲第1番 | 20 |
43 | シューマン | 交響曲第4番 | 19 |
44 | ベートーヴェン | 交響曲第4番 | 18 |
45 | ベートーヴェン | 交響曲第8番 | 17 |
45 | メンデルスゾーン | 交響曲第4番(イタリア) | 17 |
45 | シベリウス | 交響曲第7番 | 17 |
45 | ショスタコーヴィチ | 交響曲第10番 | 17 |
49 | シューベルト | 交響曲第5番 | 16 |
49 | ブルックナー | 交響曲第6番 | 16 |
1位は19世紀の後半に活躍したロマン派の作曲家・ブラームスの交響曲第4番、2位は1票差でベートーヴェンの『交響曲第3番』、3位にチャイコフスキーの交響曲第5番と続いていく。皆さんが知ってる曲はいくつランクインしているだろうか。

交響曲の名称は基本的に「交響曲第◯番」という形式になっているが、ベートーヴェンの『運命』などのように、曲に副題や別名などがある場合は『交響曲第5番(運命)』と括弧つきで併記してある。交響曲の番号は知らないけど、副題なら聞いたことがある曲もあるのではないだろうか。
交響曲の曲数ランキング
先ほどのランキングでは、特定の作曲家による交響曲が複数ランクインしているのが目についたと思う。例えばブラームスは5つの交響曲、ベートーヴェンは8曲がランクインしていた。
そこで、人気作品をたくさん世に送り出した作曲家は誰なのか?作曲家の曲数ランキングTOP10も出してみることにした。ここでの集計対象とした交響曲は上位50曲ではなく、全2,256曲が対象になっている。
順位 | 作曲家 | 出身地 | 曲数 |
1 | ハイドン | オーストリア | 25 |
2 | モーツァルト | オーストリア | 17 |
3 | ショスタコーヴィチ | ロシア | 14 |
4 | マーラー | オーストリア | 12 |
5 | ベートーヴェン | ドイツ | 9 |
5 | ブルックナー | オーストリア | 9 |
7 | チャイコフスキー | ロシア | 8 |
8 | ドヴォルザーク | チェコ | 8 |
9 | シベリウス | フィンランド | 7 |
9 | シューベルト | オーストリア | 7 |
9 | プロコフィエフ | ロシア | 7 |
1位は古典派を代表する作曲家のハイドンで、曲数はなんと25曲。ハイドンは77年の生涯で様々なジャンルの作品を作曲しており、その数は1,000曲に及ぶと言われている。

交響曲だけでも100曲以上を作曲し、「交響曲の父」とも呼ばれていることから納得の1位と言えそうだ。また、2位のモーツァルトも40以上の交響曲を作曲しており、作曲数の多さが順位に直結する結果となった。
交響曲の作曲家ランキング
最後は作曲家ごとに全曲の投票数を合算して、ランキング形式で上位15位まで出してみた。交響曲のジャンルにおいて最も支持を集めた作曲家のランキングとも言える。
順位 | 作曲家 | 出身地 | 総投票数 |
1 | マーラー | オーストリア | 296 |
2 | ベートーヴェン | ドイツ | 284 |
3 | ブラームス | ドイツ | 202 |
4 | ブルックナー | オーストリア | 190 |
5 | モーツァルト | オーストリア | 161 |
5 | チャイコフスキー | ロシア | 161 |
7 | ショスタコーヴィチ | ロシア | 128 |
8 | ドヴォルザーク | チェコ | 124 |
9 | シベリウス | フィンランド | 120 |
10 | シューマン | ドイツ | 95 |
11 | シューベルト | オーストリア | 91 |
12 | メンデルスゾーン | ドイツ | 66 |
13 | ラフマニノフ | ロシア | 58 |
14 | ベルリオーズ | フランス | 54 |
15 | ハイドン | オーストリア | 52 |
1位は指揮者としても活躍した後期ロマン派の作曲家マーラー。2位は好きな交響曲ランキングでも2位にランクインしていたベートーヴェン。この両者は突出した投票数を得ており、曲数ランキングでも上位に名を連ねていることから、交響曲において名曲が多い作曲家と言えそうだ。

日本人の交響曲ランキング(番外編)
ランキングを見ているとヨーロッパ諸国出身の作曲家が大半を占めているが、実は日本人が作曲した交響曲も存在する。トップ50以内には入っていないが、9名の日本人作曲家の作品に投票があった。こちらは番外編として紹介しておきたいと思う。
順位 | 作曲家 | 曲名 | 投票数 |
1 | 伊福部昭 | シンフォニア・タプカーラ | 10 |
2 | 矢代秋雄 | 交響曲 | 7 |
3 | 芥川也寸志 | 交響曲第1番 | 3 |
3 | 松村禎三 | 交響曲第1番 | 3 |
3 | 諸井三郎 | 交響曲第3番 | 3 |
6 | 黛敏郎 | 涅槃交響曲 | 2 |
6 | 吉松隆 | 交響曲第4番 | 2 |
6 | 吉松隆 | 交響曲第5番 | 2 |
6 | 團伊玖磨 | 交響曲第2番 | 2 |
6 | 吉松隆 | 交響曲第3番 | 2 |
11 | 柴田南雄 | 交響曲 ゆく河の流れは絶えずして | 1 |
12 | 團伊玖磨 | 交響曲第3番 | 1 |
恥ずかしながら私が知っている作曲家は一人もいなかった。しかし、調べてみると、伊福部昭はゴジラや座頭市などの映画音楽も手掛けている作曲家らしい。また、芥川也寸志は小説家・芥川龍之介の三男で指揮者としても活躍していたなど、クラシック音楽とは別の繋がりもあってなかなか興味深い。自国の作曲家が作った交響曲を聞いてみるのも面白そうだ。
まとめ
今回のランキングは、おそらくクラシックに造詣の深い人々の回答が多く反映されている。そもそも好きな交響曲を10個挙げれる時点で、たくさんの交響曲を聞いたことがある人なのだろう。すなわち、日本人による玄人好みの交響曲ランキングと言えるかもしれない。
しかし、人気がある曲には必ず理由があるはずだ。どんなところに魅力があるのかじっくり聴き込んでみても良いし、YouTubeなどで解説動画を見てみるのも良いだろう。興味の範囲を広げるきっかけとなってくれれば幸いだ。
もともと交響曲についてほとんど知らなかった私だが、今回集計の準備をしたり記事をまとめていく過程で、少しだけ知識がついてきたように思う。その中で個人的に気になったのは、フランスの作曲家ベルリオーズの『幻想交響曲』だ。
幻想交響曲は好きな交響曲ランキングで5位にランクインしているのだが、実はベルリオーズの交響曲はこの1件しかランクインしていない。つまり、幻想交響曲の1曲だけ突出して人気が高いということになる。他の作曲家は大体複数の曲がランクインしているので、これはなかなか珍しいケースだ。ランキングを眺めていると、そうしたことが見えてくることもあるのでなかなか興味深い。
なお、今回のランキングは目視しながら手作業で集計したのではなく、AI(ChatGPT)を活用して集計している。そのため、元データからすべての作曲家や交響曲を漏れなく集計できているわけではないことに留意して欲しい。
ちなみに、ChatGPTなら簡単に精度の高いランキングをポンッと出してくれるのかと言うと、そうでもない。ランキングが完成するまでは予想外の事態が頻発し、作曲家や曲名を分類するのに何度も何度もやり直しが発生するなど、これなら手作業で集計した方が早いのでは?と思うことさえあった。このあたりの過程やChatGPTを使った集計のやり方については、別途記事を書いてみたいと思う。
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