Google が提供していたドメイン登録・管理サービス「Google Domains」が2023年6月15日、米Squarespace(スクエアスペース)に買収され、Google Domainsが管理していたドメインはすべてSquarespaceへと移管された。
筆者が運営しているサイトのドメインも自動的にSquarespaceに移され、一年以上そのまま放置していたのだが、この度SquarespaceからXServerドメインに管理会社を変更した。意外と面倒だったのでその手順を書き留めておこうと思う。
Squarespaceとは
Squarespaceは米国に拠点を構える企業で、テンプレートを使って手軽にWEBサイトを構築できるCMSを提供しているほか、ドメインの取得管理やレンタルサーバー、Eコマースプラットフォーム、マーケティングツールなど様々なWEBサービスを手掛けている。
1000万とも言われるドメイン数を管理していたGoogle Domainsを買収したのもその一環だ。日本ではあまり聞き慣れない名だがニューヨーク証券取引所に上場しており、2023年の売上は9.17億ドル。当時の為替レートで日本円に換算すると1,280億円ほどの事業規模があり、Googleと比較してしまうと小さく感じるかもしれないが大手企業と言っていいだろう。
ドメインを移管した理由
では、なぜドメインの管理会社を変更しようと思ったのか。その理由は2024年7月、Google DomainsからSquarespaceへ移管されたドメインのうち、一部がハイジャック攻撃を受けるという事態が発生したことがきっかけだ。
幸い筆者のドメインは影響を受けておらず、それ以降は特に話題にもなっていないので問題が収束したのかもしれないが、本件についてSquarespaceからは何の連絡も受けていない。通常であれば注意喚起や今後の対策などを既存ユーザーに告知するべきだろう。そして、この件が関係しているのか定かではないが、2024年10月、英投資会社のペルミラに買収されて上場廃止になっている。
こうした一連の経緯にもやもやとした不信感が募っていく中で「Googleでないなら国内のドメイン管理会社でも良いのではないか?」と思うようになり、以前からレンタルサーバーを利用しているXサーバーのドメイン管理サービスへ移管することにしたというわけだ。
ドメインの移管手順
具体的な移管手順は以下のとおり。
①作業前の確認
②ダッシュボードにアクセス
③ドメインロックの解除
④DNSSECの解除
⑤ネームサーバーの変更
⑥移管コードのリクエスト
⑦XServerでドメイン移管申請
①〜⑥まではSquarespace側の管理画面で、⑦はXServerドメイン側の管理画面で行う手順だ。現在Xサーバーでサイトを運用していて、そのドメインの管理会社を「Squarespace」から「XServerドメイン」に変更したい人は参考にしてほしい。
なお、本記事で想定しているドメインの種類は「.com」「.net」など、取得条件がなく誰でも取得できる「gTLDドメイン」だ。「.jp」ドメインの移管手順は一部手順が異なるがそこは割愛する。
初めに確認すること
まず初めに、以下に該当する場合はドメインを移管することができないので、条件を整えてから手続きを行うようにしよう。
・ドメインの利用期限が2週間以内に切れる、または失効している
・移管元のドメイン管理会社でドメイン登録を行ってから60日経過していない
・移管元のドメイン管理会社が移管を認めていない
・Whois(ドメイン公開データベース)に登録しているメールアドレスでメールを受信できない
ダッシュボードにアクセス
移管条件を満たしている場合はSquarespaceのダッシュボードにアクセスする。
その際、Squarespaceアカウントのログイン情報を求められるのだが、Google Domainsを利用していたユーザーは自動的にSquarespaceアカウントが作成されているので改めて作成する必要はない。ドメインを管理していたGoogleアカウントにブラウザでログインしておき、Squarespaceのログイン画面で「Continue with Google(Googleで続行する)」をクリックするとダッシュボードにログインできる。
筆者の場合は直後にエラーが表示されてしまったのだが、ブラウザを読み込むとダッシュボードへのログインが完了していた。
ドメインロックの解除
次にダッシュボードの上部にある「Domains」をクリックして、移管したいドメインを選択する。
すると、画面中央右に「ドメインロック」という項目があり、チェックがオンの状態(緑色)になっているのでオフにしておこう。
ドメインロックがオンになったままだと、移管先(今回の場合はXServerドメイン)にドメイン情報を渡すことができないので、移管の手続きを最後まで行うことができないのだ。
DNSSECの解除
次にサイドメニューで「DNS」>「DNSSEC」の順にクリックする。この画面で表示される「DNSセキュリティ拡張機能」のチェックを必ず外しておかなければならない。
DNSSECはもともとGoogle Domainsの時から提供されているセキュリティ機能だ。これがオンになったままだと、後述するネームサーバー(DNSサーバー)の設定不備によりサイトが表示されなくなった場合、自分で設定を変更することができない状態に陥る。そして、セキュリティを解除するにはXserverに連絡して作業をしてもらう必要があり、完了までに時間を要するので必ず解除しておこう。
なお、DNSSECの解除は反映されるまでに最大48時間かかる。その間、次の手順であるネームサーバーの変更まで進めても問題はない。待ちきれない場合は、無料のDNSSEC確認ツールを提供しているサイトなどがあるので、探して利用してみると良いだろう(筆者の場合は24時間以内に解除された)。
ネームサーバーの変更
今度はサイドメニューから「DNS」>「ドメイン ネームサーバー」の画面にアクセスする。ここでXサーバーが提供しているネームサーバーアドレス「ns1.xserver.jp」〜「ns4.xserver.jp」が表示されている場合、変更する必要はない。※理由は後述のトラブル発生の項で説明する
上記のように「googledomains.com」のアドレスが表示されている場合は、画面右上の「カスタムネームサーバーを使用」をクリックして、Xサーバーが提供しているネームサーバーのドメイン「ns1.xserver.jp」〜「ns4.xserver.jp」を設定しておこう。ネームサーバーの変更は反映までに数時間から72時間程度かかるので、画面に反映されるまで次のステップに移るのは待ったほうが良いだろう。
参考までにネームサーバーを変更しなければならない理由も説明しておく。基本的にドメインを移管すると、ネームサーバーは移管元の情報がそのまま移管先に引き継がれるのだが、移管元のネームサーバー(今回のケースではgoogledomains.com)」は契約が終了するため使えなくなってしまう。そして、ネームサーバーはインターネット上でドメイン名(例:xxx.com)とIPアドレス(例:192.158.1.38)を紐づけて変換する役割を果たしているので、使用できないネームサーバーが設定されている状態だと、ウェブサイトが表示されないという事態が起こってしまうのだ。
さらにこの時、間違いに気づいてネームサーバーを変更しようとしても、前述のDNSSECを解除し忘れているとセキュリティロックがかかった状態となり、移管先であるXServerドメインの管理画面でネームサーバーを変更することができない。当然移管元のSquarespaceのダッシュボードからも変更できない。
結果的にXServerドメインのサポートに対応を依頼することになるので注意が必要だ。
移管コードをリクエスト
「DNSSECの解除」と「ネームサーバーの変更」が反映されたのを確認したら次は「移管コードの発行」を行う。これはドメインの移管先に申請をする際、必要となるコード(文字列)を発行してもらう手続きで、Squarespaceのダッシュボードで行う最後の手順だ。
サイドメニューの「概要」ページの最下部に移動して「移管コードをリクエストする」>「認証コードを送信する」の順にクリックしよう。
認証コードが届くまで最大24時間かかるらしいが筆者の場合は3時間くらいで届いた。Squarespaceから「ドメイン認証コード」というタイトルのメールを受信して、本文にコードの記載があるのを確認したら、ようやく移管先のサイトで申請を行うことができる。
XServerでドメイン移管申請
ここからは移管先であるXServerドメインでの申請作業だ。ドメイン移管の申請をするにはXServerアカウントへの登録が完了している必要があるが、すでにXサーバーを利用している場合は登録済みのはずなのでその手順は割愛する。
まずはXServerドメインの管理画面にアクセスして、右上の「ドメイン移管」をクリック。申込画面が表示されるのでテキストボックスに移管したいドメイン名を入力する。改行して記述すれば複数のドメインを一括で移管申請することも可能だ。
直下にある「ドメインを検索する」をクリックすると検索結果が表示されるので、移管したいドメインにチェックを入れてSquarespaceから送られてきた「認証コード」を入力。利用規約の同意にチェックを入れて「お申込み内容の確認とお支払いへ進む」をクリックする。
続いて表示されるのは「Whois初期値設定」の画面。ドメイン所有者の情報を公開したくない場合は、Whois代理公開設定にチェックを入れて必要事項を記入していき、最後に「有効性確認メールを送信する」をクリックする。
筆者の場合はすぐにメールが届いたが、メール本文に「認証用URL」が記載されているのでアクセスして認証を完了する。この認証作業を怠るとドメインの利用を制限されてしまうのでメールを見逃さないようにしよう。
認証が終わったら手続き中の画面に戻って「Whois情報(初期値設定)を設定する」をクリックすればWhois初期値設定は完了。続けて「手続きを続行する」をクリックして、支払い情報を入力したらドメインの移管申請作業は完了だ。
XServerドメインの管理画面トップページにアクセスすると、先ほど申請したドメインが追加されており、右側に「移管申請状況確認」というボタンがある。
ここをクリックすると「ドメインの移管申請中です。移管処理が完了するまで、しばらくお待ちください。」とメッセージが記載されているので、後はXserverからの移管完了メールを待っていればOKだ。
ちなみにこの翌日、Squarespaceからドメインを本当に移管してよいか確認する内容のメールが届いた。このまま移管作業を進めてOKならばメールは無視しておこう。
ドメイン移管の完了
ドメインの移管申請作業が終わると、今度はドメインの管理者側で承認作業が行われる。この承認作業は通常1週間から10日ほどかかると言われている。
筆者の場合はドメインの移管申請から5日後、Squarespaceから「ドメイン移管リクエストが完了しました」というメールが、XServerドメインからは「ドメイン移管完了のお知らせ」というメールがそれぞれ届いた。
このタイミングでXServerドメインの管理画面トップページへアクセスして、「移管申請状況確認」のボタンをクリックすると、「ドメイン移管は正常に完了しました」とのメッセージが表示される。
その後トップページへ戻り、右側の3点ボタンをクリックすると、以前は見れなかったドメインの設定情報が見れるようになっている。これでようやくドメインの移管が完了したことになる。
トラブル発生【重要】
自信たっぷりに手順を紹介してきたが、実は筆者がドメイン移管を行った際、9時間ほどWEBサイトが表示されない事態に陥ってしまった。その反省点を詳しく書いておく。
少しややこしいのだがXサーバーの場合、レンタルサーバー(=Xサーバー)とドメイン管理サービス(=XServerドメイン)で、それぞれ異なるネームサーバーを提供している。レンタルサーバーは「ns1.xserver.jp」、ドメイン管理サービスは「ns1.xdomain.ne.jp」といった具合だ。この場合どちらのネームサーバーを使用すれば良いのか、またはどちらでも良いのか素人には分からない。
そこで調べてみたところ、筆者と同じようにSquarespaceからXserverドメインへ移管する手順を紹介したサイトが見つかった。そこではXserverドメインのネームサーバー(ns1.xdomain.ne.jp)が設定されていたので同じように設定してみた。ところが、何故かWEBサイトが表示されなくなってしまったというわけだ。
手順が間違っているとすればネームサーバー以外に心当たりがなかったため、慌ててレンタルサーバーのネームサーバー(ns1.xserver.jp)に変更してみた。すると9時間後に反映されて無事WEBサイトが表示された。ドメイン管理サービスのネームサーバーでは駄目だったのだ。④の手順で「ns1.xserver.jp」〜「ns4.xserver.jp」とレンタルサーバーのネームサーバーを書いたのはそのためだ。
9時間もサイトが表示されないのはかなり痛い。今後同じ間違いを犯さないためにも原因を調べてみると、どうやらドメイン管理会社とレンタルサーバーが別々のネームサーバーを提供している場合、レンタルサーバーのものを使用するのが一般的なようだ。理由はレンタルサーバーのネームサーバーを設定すれば、ドメインとレンタルサーバーの情報が自動的に紐づけられるから、ということらしい。
一方、ドメイン管理会社のネームサーバーを設定しただけではレンタルサーバーの情報は紐づかない。別途手動でDNSレコードという詳細情報の設定を行う必要がある。それならばドメイン管理会社のネームサーバー使うメリットがないようにも思うが、レンタルサーバー側でネームサーバーを用意していなかったり、レンタルサーバーのDNSレコードを自由に変更できなかったり、サーバーを移転する際にDNSレコードを書き換える手間を省く、といった場合などに使用することがあるようだ。そうした理由がなければ基本はレンタルサーバー側のネームサーバーを使うと覚えておこう。
Q&A
SquarespaceからXServerドメインへの移管手順は上述のとおりだが、まだ移管を検討している段階の人もいるだろう。そこで他に疑問が出そうな点を以下にまとめておいたので参考にしてほしい。
移管後にやることはあるのか?
ドメインの移管が完了したら、WEBサイトが正常に表示されるか、Whoisが自分の意図する内容になっているか必ず確認しておこう。また、該当ドメインを使ったメールアドレスで正常に送受信ができるのかも念のため確認しておくことをお勧めする。
移管作業にかかる時間は?
本記事で紹介した工程では「DNSSECの解除反映に最大48時間」「ネームサーバの変更反映に最大72時間」「ドメインの移管申請完了メールが届くのに最大10日間」あたりに結構時間がかかる可能性がある。前者2つは時間を重複させられることを差し引いても、ドメインの移管作業開始から完了まで2週間くらいかかる想定でいたほうが良いだろう。
移管後のメリットは?
今回のドメイン移管により、ドメインとサーバーの請求・契約状況が一社の管理画面に集約されたので、個人的にはサイトの運営管理がしやすくなった。コスト的にもメリットがあったので、筆者の場合は移管して良かったということになる。
SquarespaceとXServerドメインどっちが安い?
筆者の既存ドメインはSquarespaceだと1,400円/年、XServerドメインだと1,602円/年で、200円ほどSquarespaceの方が安い。但し、今回XServerドメインに移管した際、1年目の価格が1円になるキャンペーンが適用されていたため、それを考慮するとXServerドメインの方が安いということになる。また、新規ドメインを取得しようとした場合、同じドメイン(例えば20t24qwer.com)の価格を比べるとSquarespaceは2,100円/年、XServerドメインは770円/年となり、こちらはかなりXServerドメインの方が安くなるようだ。
さて、ここまで長々と書いてきて疲れてしまったが、この記事を読んだ人も疲れたと思う。おつかれさま。無事にドメイン移管が完了することを祈る。